期待の新人

ある日、背の高い男性がK副道院長に随われて体育館に入ってきました。
彼の名前はIZさん。職業は公務員です。

彼が少林寺をはじめようと思った理由は、未だに謎ですが、噂によると何やら重要な任務をもって、僕達の道院に入門されたとのことです。
このIZさん、 「口から生まれてきたんじゃないの?」
って思うほど、実に良くしゃべります。

「いやーっ、少林寺って難しいですねえ。僕はスキーとか、テニスとかは得意なんですけど、なかなかそういうわけにはいきませんねえ。」

練習中にこんな言葉を聞いてもいないのに喋り捲ります。
「いったい、この彼のどこに重要な任務があるのだろうか・・・」
それは数ヵ月後にわかりました。
道院で、父兄の方々を招いて、お食事会をしたときのことです。
お食事会と言っても・・・お母様方の飲み会
と言ったほうが良いかも知れません。少年拳士のお母様方に最後は完全に仕切られるのが毎度のこと。
その隅で、僕達拳士会は小さくなってます。
そのとき
「お母様方!今宵はゆっくりやりましょー!」

とIZさんがビール瓶片手に父兄の輪に入っていきました。
そして酒豪のお母様方のお話相手を買って出たのです。
黒帯有段者の人達も恐れおののく大奥の皆々様に大した勇気です!
しかも得意の話術で完全にまとめてしまいました。
おかげで僕達に火の粉がかからなくて済みました。
彼の任務遂行に皆、脱帽でした・・・。





